A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
本日は
「パワハラにならない叱責のしかた 」をお送りします。
「パワハラです!」と部下から言われるのが怖くて、指導なんてできない。。。 そのように感じておられる方は、少なくありません。
では、「パワハラ」と言われない叱責方法には、どのようなものがあるのでしょうか。今回はパワハラと思わせてしまう叱責とはどのようなものか。それに対し、パワハラと思わせないためのポイント3点についてお話しします。
・叱責する動機を思いに留める ・状況を考慮する ・理解力を考慮し、具体的な点に焦点を合わせる また、「改めてパワハラとは何か」そして、「会社が対応しておくべき措置や取り組み」についてご紹介します。
動画解説(2分35秒)是非ご覧ください!
<画像をクリックすると動画を視聴できます>※倍速視聴も可能です。
参考:「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(厚生労働省)
職場におけるパワーハラスメントとは
2019年に改正された労働施策総合推進法において、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)について事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。
<労働施策総合推進法> (雇用管理上の措置等) 第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とし た言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 |
パワハラと思わせてしまう行為
皆さんは下記内容に当てはまる行為を行っていませんか?
暴力や暴言、侮辱などは誰もが知っていることかと思いますが、
無視をしたり、大量の出来ない業務を押し付けたり、本人のやる気があるのに過少の業務しか与えなかったりする行為もパワハラに該当します。【具体的内容】
① 身体的な攻撃(暴行・傷害) ② 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) ③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) ④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) ⑤ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと) ⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) |
パワハラにならない叱責の仕方とは
なぜ必要な叱責が部下にとって「パワハラ」だと認識してしまうか?
下記3点を理解し、心がけることで部下に指導の目的が適切に伝わるのではないでしょうか。
① 叱責する動機を思いに留める ・叱責した目的を部下に理解してもらう必要があります。事故予防の為など、なぜ叱責したかを話し合いましょう。 ② 状況を考慮する ・部下がどういった環境や状況だったかを理解し、叱責することも大切です。感情的な指導にならないように注意しましょう。 ③ 理解力を考慮し、具体的な点に焦点を合わせる ・知識不足でないか、部下の能力を考慮し、出来る業務に対しての叱責または出来ない業務については上司に確認してもらうように日頃から指導することが必要です。具体的な指示を出すことや質問しやすい環境を作ることも大切です。 |
事業主及び労働者の責務
事業主と労働者の責務について下記のとおり明確化されています。
【事業主の責務】
◎職場におけるパワハラを行っていないこと等これに起因する問題(以下「ハラスメント問題」という。)に対する労働者の関心と理解を深めること ◎その雇用する労働者が他の労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと ◎事業主自身(法人の場合はその役員)がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うこと
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【労働者の責務】
◎ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者(※)に対する言動に注意を払うこと ◎事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること |
※ 取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。
職場におけるパワハラ防止のために講ずべき措置
事業主は、以下の措置を必ず講じなければならないと
義務化されました。【事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発】
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること ② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
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【相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること ④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること |
【職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応】
➄ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること ⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1) ⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1) ⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(注2) ※注1 事実確認ができた場合 注2 事実確認ができなかった場合も同様 |
【そのほか併せて講ずべき措置】
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること ⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること ※注3 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む。
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その他のパワハラ防止に関する取り組み
義務となっている事業主の対応はもちろん、社内での予防策も検討する必要があります。
◎セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等と一元的に相談に応じることのできる体制の整備 ◎職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するための取組 ・コミュニケーションの活性化や円滑化のための研修等の必要な取組 ・適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組 ◎必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、雇用管理上の措置の運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること |
参考:「パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました」(厚生労働省)
「職場におけるハラスメントの防止のために」(厚生労働省ホームページ)
まとめ
パワハラは被害者と加害者間での問題だけではなく、会社にも社会的影響や優秀な人材を失うなどの大きな損害につながります。加害者は無意識にパワハラをしている場合もあり、日頃から社内研修などによる予防対策と相談窓口の周知や体制整備をしておく必要があります。
また、実際にパワハラが発生した際には、迅速な対応が求められ、事実確認と再発防止策及び懲戒等の検討が必要となります。
改めて自分自身の会社での責任や立場から教育方針を見直し、指導時の叱責について目的を明確にすることで、パワハラではない適切な指導により部下の成長につながるのではないでしょうか?≪自社におけるハラスメント防止対策チェックシート≫
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