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【京都の社労士コラム】カスタマーハラスメント対策で、より良い職場環境づくりを!

2022年06月23日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

2022年2月に厚生労働省から発表された「カスタマーハラスメント対策マニュアル」についてです。
近年、顧客からの著しい迷惑行為が問題となっています。
顧客等からのクレームには、商品やサービス等への改善を求める正当なクレームがある一方で、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。
今後企業には不当・悪質なクレーム、いわゆるカスタマーハラスメントから従業員を守る対応が求められます。

社員一人に抱え込ませずに、組織的な対応を目指して行きましょう!


そもそもカスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメントとは、顧客等からのクレーム全てを指すものではありません
カスタマーハラスメントを明確に定義することはできませんが、企業の現場においては以下のようなものがカスタマーハラスメントであると考えられています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上相当のものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの


カスタマーハラスメントの判断基準

一つの尺度としては、①顧客等の要求内容妥当性はあるか、②要求を実現するための手段・態様社会通念に照らして相当な範囲であるかという観点で判断することが考えられます。

<①顧客等の要求内容に妥当性はあるか>
顧客等の主張に関して、まずは事実関係、因果関係を確認し、自社に過失がないか、または根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当であるかどうか判断します。
例えば、顧客が購入した商品に瑕疵がある場合謝罪とともに商品の交換・返金に応じることは妥当です。逆に、自社の過失、商品の瑕疵などがなければ、顧客の要求には正当な理由がないと考えられます


<②顧客等の要求内容に妥当性はあるか>

その要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認します。
例えば、長時間に及ぶクレームは、業務の遂行に支障が生じるという観点から社会通念上相当性を欠く場合が多いと考えられます。また、顧客等の要求内容に妥当性がない場合はもとより、妥当性がある場合であっても、その言動が暴力的・威圧的・継続的・拘束的・差別的、性的である場合は、社会通念上不相当であると考えられ、カスタマーハラスメントに該当し得ます。




<出典:厚生労働省カスタマーハラスメント対策リーフレット

<そもそも犯罪の可能性も?>

殴る・蹴るといった暴力行為は、直ちにカスタマーハラスメントに該当すると判断できることはもとより、犯罪に該当しうるものです。


業種や業態、企業文化などの違いから、カスタマーハラスメントの判断基準は企業ごとに違いが出てくる可能性があることから、各社であらかじめカスタマーハラスメントの判断基準を明確にした上で、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要と考えられます。


カスタマーハラスメントは影響は大きい

【従業員への影響】

・業務のパフォーマンスの低下
健康不良(頭痛、睡眠不良、精神疾患、耳鳴り 等)
・現場対応への恐怖、苦痛による従業員の配置転換、休職、退職


【企業への影響】

・時間の浪費(クレームへの現場での対応、電話対応、謝罪訪問、社内での対応方法の検討、弁護士への相談 等)
・業務上の支障(顧客対応によって他業務が行えない 等)
・人員確保(従業員離職に伴う従業員の新規採用、教育コスト 等)
・金銭的損失(商品、サービスの値下げ、慰謝料要求への対応、代替品の提供 等)
・店舗、企業に対する他の顧客等のブランドイメージの低下


【他の顧客等への影響】

・来店する他の顧客の利用環境、雰囲気の悪化
・業務遅滞によって他の顧客等がサービスを受けられない



                     
どうやって対策したらいいの?

<①~④カスタマーハラスメントを想定した事前の準備>

① 事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
・組織のトップが、カスタマーハラスメント対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示す。
・カスタマーハラスメントから組織として従業員を守るという基本方針
・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育する。

② 従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
・カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。
・相談対応者が相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

③ 対応方法、手順の策定
・カスタマーハラスメント行為への対応体制、方法等をあらかじめ決めておく

④ 社内対応ルールの従業員等への教育・研修
・顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの社内における具体的な対応について、従業員を教育する。


<⑤~⑧カスタマーハラスメントを実際に起こった際の対応>

⑤ 事実関係の正確な確認と事案への対応
・カスタマーハラスメントに該当するか否かを判断するため、顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認する。
・確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに過失がある場合は謝罪し、商品の交換・返金に応じる。瑕疵や過失がない場合は要求等に応じない。

⑥ 従業員への配慮の措置
・被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適正に行う(繰り返される不相当な行為には一人で対応させず、複数名で、あるいは組織的に対応する。メンタルヘルス不調への対応等)。

⑦ 再発防止のための取組
・同様の問題が発生することを防ぐ(再発防止の措置)ため、定期的な取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行う。

⑧ ①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置
・相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。
・相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、従業員に周知する。


カスタマーハラスメント対策チェックシート付マニュアルが厚生労働省より公開されております。是非ご活用ください。

カスタマーハラスメント対策企業
マニュアル


カスタマーハラスメント対策の効果

カスタマーハラスメント対策に取り組む企業へのヒアリングにおいては、対策に積極的に取り組むことによって、複数のメリットが確認されています。
具体的には、業務において経験が蓄積されることで迷惑行為への対応がスムーズになったというもや、迷惑行為をする顧客等が来なくなった、従業員が明るくなったといったものが見られます。


<出典:厚生労働省カスタマーハラスメント対策リーフレット

その他、従業員を守るということを行動で示す大事さを会社組織として再認識できる、人材の確保が難しい中、カスタマーハラスメント対応等により職場環境を良くすることで離職を減らすことにつながるといった意見も確認できています。


まずは相談できる体制を!

カスタマーハラスメントを受けた従業員が気軽に相談できるように相談対応者を決めておき、または相談窓口を設置して従業員に広く周知するとよいでしょう。
なお、相談窓口は、カスタマーハラスメントのために必ずしも特別に設ける必要はありません。パワーハラスメント等を取り扱うハラスメント相談窓口や社内ヘルプライン等で対応できるようにするなど、社内関係部署(人事労務部門、法務部門等)、外部関係機関と連携が取りやすくすると良いでしょう。
パワハラ防止法の成立により2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)からハラスメント相談窓口の設置が義務化されております。
対応がまだ出来ていない企業は、これを機に相談窓口の設置を行いましょう。

A社会保険労務士法人では、ハラスメント相談窓口の規定なども含め就業規則の改正や労務に関するご相談を承っております。
また、助成金の活用や労働保険・社会保険関係の手続きなど人事労務に関することはA社会保険労務士法人にお任せください!









  


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