無期転換ルールの例外
無期転換ルールがあるからと言って、会社が何も対応しないと生涯に渡り雇用し続けることになる可能性があります。
そんな会社のリスクを抑えるために無期転換ルールには、2つの例外があります。「専門的な知識を有している」または「定年後にも継続して同じ企業に雇用されている」有期契約労働者は、会社が法令上定められている雇用管理を計画し、都道府県労働局長の認定を受けた場合に、一定の期間、無期転換申込権が発生しなくなる特例があります。1 高度専門職の特例
通常は、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に無期転換申込権が発生しますが、
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主に雇用され、
・高収入で、かつ高度の専門的知識等を有し、
・その高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(特定有期業務。以下「プロジェクト」といいます。)
(※)に従事する 有期雇用労働者(高度専門職)については、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10 年です。
(※)毎年度行われる業務など、恒常的に継続する業務は含まれません。
● 年収要件 事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に、その事業主から支払われると見込まれる賃金の額を、1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1,075 万円以上(※)であることが必要です。 (※)「支払われると見込まれる賃金の額」とは、契約期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額をいいます。 具体的には、個別の労働契約または就業規則等において、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金は全て含まれる一方で、所定外労働に対する手当や労働者の勤務成績等に応じて支払われる賞与、業務給等その支給額があらかじめ確定されていないものは含まれないものと解されます。ただし、賞与や業績給でもいわゆる最低保障額が定められ、その最低保障額については支払われることが確実に見込まれる場合には、その最低保障額は含まれるものと解されます。
● 高度専門職の範囲 次のいずれかにあてはまる方が該当します。 ① 博士の学位を有する者 ② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士 ③ IT ストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者 ④ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者 ⑤ 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー ⑥ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント ⑦ 国等(※)によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者 (※)国、地方公共団体、一般社団法人または一般財団法人その他これらに準ずるものをいいます。 |
(例)7年のプロジェクトの開始当初から完了まで従事する高度専門職については、その7年間は無期転換申込権が発生しません。
2 定年後の高齢者の特例 通常は、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に無期転換申込権が発生しますが、
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、・定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。
※事業主が認定を受ける以前より、同一事業主に定年後引き続き雇用されている方も特例の対象となります。ただし、労働者が既に無期転換申込権を行使している場合を除きます。
※他の事業主(特殊関係事業主除く)に65歳以降の継続雇用をされる方や定年後に再就職した方は、特例の対象にならず、無期転換ルールが適用されます。(例)定年後の法令上定められている雇用管理を計画し、都道府県労働局長の認定を受けた場合
(出典)厚生労働省『高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について』
雇用契約書への記載
令和6年4月1日改正の雇用契約書雛形などを見られた方は、何の文章か分からなかったのではないでしょうか? 「高度専門職の特例」または「定年後の高齢者の特例」について認定された事業所で、対象者と契約する際は雇用契約書に次のように記載が必要です。
①当該対象者の該当する内容を記載しましょう。 無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者) Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間( 年 か月(上限10年)) Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間
②特定有期業務の場合は従事すべき業務の内容について、特定有期業務の「業務内容」「開始日」「完了日」の記載が必要です。 |
(出典)厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー』 労働条件通知書【一般労働者用】常用、有期雇用型
まとめ
無期転換ルールについて理解し、社内制度の整備を実施することでリスクを抑え、優秀な人材確保に活かしていくことが必要です。それぞれの会社に合った管理や制度を法律に沿って整備するためにも、社労士等の専門家にご相談ください。 法律の目的や特例などを理解することで自社に合った労務管理や職場環境が整備出来るのではないでしょうか?
会社・労働者双方にとってより良い、労働環境を整えましょう。