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【京都の社労士コラム】2024年『改正雇用保険法』成立。あなたにも影響があるかもしれません!

2024年07月26日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 2024年5月10日に改正雇用保険法が成立致しました。今回の改正では、昨今の急激に変化する多様な働き方の雇用に関するセーフティネットの役割を果たし、
政府が掲げる「人への投資」の強化を目的として、対象となる被保険者の拡大や給付制限の見直し等が行われます。
更に、雇用保険法には、今回の法改正以外にも施行が予定されているものもある事から、企業や従業員への影響が大きい改正内容にスポットを当てて、解説致します。



適用要件の拡大(2028年10月施行)
2024年10月から社会保険の適用拡大が行われますが、今回の改正で雇用保険についても適用要件が拡大することとなりました。

非正規雇用の増加や、働くことに対する価値観やライフスタイルの多様化が進む中で、働き方や生計維持のあり方に対応し、
雇用のセーフティーネットを拡大することが目的です。

 
これまでは週所定労働時間が「20時間以上」の労働者が雇用保険の対象でしたが、2028年10月1日からは「10時間以上」の労働者へと対象が広がります。
これにより、約500万人の労働者が新たに雇用保険の対象となります。

さらに適用要件の拡大に伴い、20時間を基準として設定されていた他の基準も合わせて変更されます。

point
※改正から施行までの準備期間が長く設定されていることや、新たな対象者数からも分かる通り、企業と労働者の双方にとって大きな影響のある変更です。
 対象となる可能性があるパート・アルバイトを雇用している企業は、スムーズに対応できるよう事前に準備をしておきましょう。

参考資料:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律」の改正内容 P3


 

自己都合離職者の給付制限緩和(2025年4月施行)
雇用保険の基本手当には、正当な理由がなく自己都合で離職した者に対して、原則2か月間の給付制限があります。
これは、自ら失業状態を選ぶのは、労働の意思がないとみなされ、基本手当を支給することは就業の促進を目的とする雇用保険の理念に反するといった考えから
設定されています。

しかしながら、近年では転職のために離職する労働者も増加しており、労働の意思を持つ自己都合離職者が増えている事から必ずしも労働の意思が無いとは言い切れなくなっています。
そこで、転職を目指す労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、2025年4月1日から給付制限期間が1か月へ短縮されます。
さらに、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練給付制度を利用し教育訓練を行った場合は、給付制限が解除されます。

point
※5年間で3回以上の自己都合離職の場合の給付制限期間は3か月となります。

 
参考資料:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律」の改正内容 P4



 育児休業給付の延長申請における審査の厳格化(2025年4月施行)
育児休業給付金』は、労働者の育児休業の取得を促進するために、休業期間中に賃金の一定額が支払われる制度です。
原則、子が1歳に達する日までの休業期間に対して支給されます。

point
※子が1歳に達した日の後の期間であっても、就労を継続するために育児休業が特に必要と認められる場合には、
 1歳6か月または2歳に達する日までの延長が例外的に認められています。

この「育児休業が特に必要と認められる場合」として、「保育所などの入所を希望し申込みを行ったが、当面入所できない場合」が規定されており、
自治体の発行する入所保留通知書が確認書類として必要ですが、保育所を利用するつもりがないにもかかわらず、育児休業給付の延長を目的に申込みを行う者が一定数いるため、入所保留通知書を発行する自治体の負担となっていました。

そこで、自治体の業務量軽減と不正防止を図る為、以下のように制度が改正されます。

   改正後に追加される要件によって、育児休業給付の延長だけを目的とした入所意思がない者に対しては支給されなくなります。また入所意思の確認のために、
申し込んだ保育所までの通所時間や入所内定を辞退した理由などの申告も必要となり、審査が厳格化されます。

この改正は、2025年4月1日から施行されます。ただし施行日前に、子が1歳、または1歳6か月にすでに達している場合には、この規定は適用されないため
注意が必要です。
point
※「パパママ育休プラス」の場合は、施行日前に育児休業の終了予定日に達していると適用されません。

参考:厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き」



高年齢雇用継続給付の支給率の縮小(2025年4月施行)
高年齢者雇用継続給付』とは、被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者で、賃金が60歳時点の賃金額の75%未満となった者に対して、賃金の原則15%を支給する制度です。
point
※賃金の低下率によって15%を上限として支給率も変動します。


2025年4月1日からは、この給付額が60歳以後の各月の賃金の15%から10%へ縮小されます。なお、賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は、給付額が10%から逓減されます。

高年齢者雇用継続給付金』は、これまでも給付率が縮小されてきました。そして、近年では雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が目指されていることから、
今後段階的に廃止される予定す。企業としては、公正な待遇の確保のために、賃金制度や処遇の見直しを検討することが大切です。

参考:厚生労働省「高齢者雇用継続給付の見直し」



出生後休業支援給付・育児時短就業給付の創設(2025年4月)
2025年4月1日から、『出生後休業支援給付』と『育児時短就業給付』が新たに創設されます。

 出生後休業支援給付
出生後休業支援給付』とは、男性は子の出生後8週間以内女性は産後休業後8週間以内に、両親とも14日以上の育児休業を取得すると休業期間の28日間を上限に休業開始前賃金の13%の額が支給される制度です。

この制度は、収入の低下を懸念する男性に所得を促し、取得率を上げることが目的です。既存の育児休業給付に出生後休業支援給付が上乗せされることで、休業開始前賃金の80%の額が支給されることになり、社会保険料の免除を合わせると手取り収入が休業前と変わらなくなります。
 



 『育児時短就業給付』
育児休業だけでなく、育児とキャリア形成の両立を支える制度として短時間勤務制度がありますが、利用率は伸び悩んでいます。そこで、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する『育児時短就業給付』が創設されます。労働時間の減少に伴う賃金低下を補い、時短勤務の利用を促進することが目的です。

point
給付金は賃金額と給付額の合計額が時短勤務前の賃金を超えることがないように支給されます。


  

(出典)こども家庭庁『子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案の概要』P7



まとめ
今年の改正雇用保険法の成立に伴う、制度の変更等について解説させて頂きました。
特に『雇用保険の適用拡大』については2028年10月施行となるため、「まだまだ先のお話でしょ?」と捉えられがちですが、企業・従業員に大きな影響があるからこそ長い準備期間が設定されているともいえます。今回の記事以外にも、雇用保険法にはさまざまな改正が予定されており、内容によっては企業や従業員に大きな影響があるものもありますので、常に新しい情報にはアンテナを張って、事前に把握し、早いうちから対策しておくことが大切です。



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