
A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
今回は、2025年4月施行された『育児時短就業給付金』についてご案内いたします。
近年は育児の支援を行うため、育児・介護休業法の改正や雇用保険等の給付について、定期的に改正が行われています。 子育てと仕事の両立を後押しするこの制度は、企業にも従業員にも大きなメリットがあります。 今回は、育児のための時短勤務を行った際に、労働者に支給される「育児時短就業給付金」について解説しますので、事業主や労務担当者は是非参考にして頂ければと思います。
動画解説(2分48秒)是非ご覧ください。
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育児休業等給付について
雇用保険の育児休業等給付には、出生時育児休業給付金、育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金があります。 各給付の時期などは以下のとおりです。

参照 | 厚生労働省『育児時短就業給付パンフレット』
育児時短就業給付金及び創設された経緯
【育児時短就業給付金とは】 2025年4月1日より、雇用保険の被保険者の方が、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと「育児時短就業給付金」の給付を受けることができます。 これにより、経済的負担を軽減しながら柔軟な働き方を選びやすくなります。 |
【創設された経緯】 これまで育児・介護休業法により3歳未満の子供を育てる従業員が短時間勤務制度の取得が出来ました。しかし、制度を利用し時短就業を行っても、賃金を補填する給付はこれまでありませんでした。 これを補う目的で、新たな経済的な支援として創設されました。 |
育児時短就業給付金の受給のポイント(実務対応の要点)
育児時短就業給付金の受給資格や対象月などの要件は以下①~③をご確認下さい。
①受給資格者 以下の2点を満たす必要があります。 ・2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること。 ※「被保険者」とは、雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者をいいます。 ・育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと または、 育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること。 ※疾病、負傷、出産、育児等により30日以上の期間がある場合の例外もあります。
②支給の対象となる月(支給対象月) 以下のすべてを満たした月に支給されます。 ・月の初日から末日まで雇用保険の被保険者である ・1週間当たりの所定労働時間について短縮勤務を実施している ・初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない ・高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない
③対象となる時短就業 2歳に満たない子を養育するために、被保険者からの申出に基づき、事業主が講じた1週間当たりの所定労働時間を短縮する措置をいいます。 ・1週間当たりの所定労働日数を変更した結果、1週間当たりの所定労働時間が短縮される場合 ・短時間正社員やパートへの転換により所定労働時間が短縮される場合 ・所定労働日数の変更による労働時間の短縮 ※労働時間の上限・下限はありませんが、週20時間未満になる場合は、小学校就学の始期に達するまでに1週間の所定労働時間が20時間以上として復帰することが就業規則等で確認できる必要があります。それ以外の場合は雇用保険を喪失することとなり、育児時短就業給付金の支給対象となりません。
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支給額の計算
原則として
育児時短就業中に支払われた賃金額 × 支給率(10%) で支給されます。
ただし、 ・育児時短就業開始時賃金月額の90%を超える賃金を得ている場合 ・支給額と賃金の合計が上限額を超える場合 などには、支給額の調整が行われます。 2025年7月までの最低支給額は「2,295円」、支給上限額は「459,000円」です(年1回見直しあり)。 |

参照 | 厚生労働省『育児時短就業給付パンフレット』 厚生労働省『育児時短就業給付金リーフレット』
手続きとスケジュール
申請は会社が実施します。以下3点を同時に行うのが一般的です。 ①育児時短就業開始時賃金の届出 ②受給資格確認 ③初回の支給申請
提出先: 管轄のハローワーク 申請期限: 育児時短就業を開始した月の初日から起算して「4か月以内」
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 参照 | 厚生労働省『育児時短就業給付パンフレット』
その他アドバイス
・育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始した場合は、一部書類の提出が省略できます。 ・2025年4月以前から時短勤務をしている方も、4月1日以降の要件で確認することで対象になる可能性があります。 ・同一の子について再度時短就業する場合も、支給対象となることがあります。 |
まとめ
この育児時短就業給付金は、企業にとっても「育児との両立を支援する体制がある職場」としての評価向上につながります。 実務上は就業規則の整備や従業員への制度周知が重要になります。
特に「男女問わず育児参加が可能な制度」であることから、男性育休の取得促進や育児への関わりの見直しにもつながる制度です。 採用活動においても、仕事と家庭の両立は重要視されていますので、是非この機会に社内の制度や規則、就労環境等の見直しも検討してみましょう。
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