ブログ

【京都の社労士コラム】目の前の従業員が"長時間労働"になっていませんか?適切な時間管理と効率化で長時間労働を解消!

2025年09月18日

ブログ一覧戻る




A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

昨今、慢性的な人手不足が叫ばれる中、いままでの仕事を足りない人数で処理するため、在籍している従業員の長時間労働も大きな問題となっています。
継続的な長時間労働は、従業員の脳・心臓疾患あるいはうつ病などの精神疾患などの発症リスクを高める可能性があります。
最悪のケースでは、過労死へとつながります。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図るとともに、従業員の健康管理に係る措置を徹底し、良好な職場環境(職場風土を含む)を形成の上、従業員の心理負荷を軽減することは急務の課題となっています。

本コラムでは、長時間労働を未然に防ぐポイントを整理し、役立つ情報をお届けいたします。



法律上働くことができる時間は何時間?

①法律上の「労働時間・休日の原則」

労働基準法では、労働時間は原則として、1⽇8時間・1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といいます。また、休⽇は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています。

引用:厚生労働省 「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休⽇に労働させる場合には下記が必要です。

●労働基準法第36条に基づく労使協定(36(サブロク)協定)の締結
●所轄労働基準監督署⻑への届出

36協定について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【京都の社労士コラム】今更聞けない!! 36協定の基本知識を理解して会社を守ろう。


労災認定から考える"長時間労働"の基準とは

●時間外・休日労働と健康被害リスクの関係

※注意
①上の図は労災補償に係る脳・心臓疾患の労災認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果をを踏まえたものです。
②業務の過重性は、労働時間のみよって評価されるものではなく、就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべきものです。
③「時間外・休日労働」とは、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間のことです。
④2~6ヶ月平均で月80時間を超える時間外・休日労働時間とは、過去2か月間、3か月間、4か月間、5か月、6か月間のいずれかの月平均の時間外・休日労働時間が80時間を超えるという意味です。
引用:厚生労働省「過労死等防止啓発月間」リーフレット

①業務と発症の関連が強まる時間基準

●週40時間を超える時間外・休日労働時間おおむね45時間を超える場合

②業務と発症の関連が強いと評価される時間基準

●週40時間を超える時間外・休日労働時間が次のどちらか又はどちらもに当てはまる場合
①発症前1か月間におおむね100時間
②発症前2か月間ないし6か月間にわたっておおむね80時間を超える場合


また、精神障害については以下のような基準によっても業務と発症の関連が強いと考えられています。


●下記のいずれかまたは複数に当てはまる場合
①発病直前の1か月におおむね160時間以上

②発病直前の3週間におおむね120時間以上
③発病直前の連続した2か月間に1月当たりおおむね120時間以上
④発病直前の連続した3か月間に1月当たりおおむね100時間以上

参考:厚生労働省「確かめよう労働条件」HP


慢性的な長時間労働のリスク

長時間労働と関連する健康問題には、脳・心臓疾患(過労死)精神障害・自殺、その他には胃十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、腰痛、月経障害や、事故・ケガ等があげられます。長時間労働は、労働の負荷を大きくするだけでなく、睡眠・休養時間、家族生活・余暇時間の不足を引き起こし、疲労を蓄積させます。
一方、長時間労働の背景には、仕事の成果の高い要求(業務量が多い、質的に高度な仕事)があり、精神的負担、仕事密度の増加をもたらして、疲労の蓄積の原因になります。その疲労が健康に影響します。


引用:新潟県労働衛生医学協会 健康づくり応援通信11月号「長時間労働による健康障害」


長時間労働等による事業主への影響

36協定を超える残業や月100時間以上の時間外・休日労働は労働基準法違反となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
さらに、従業員の健康悪化による賠償責任リスク、労働災害の発生、生産性低下、離職率上昇など、企業経営に重大な影響を与える多面的なリスクが発生します。

引用:厚生労働省「長時間労働の削減に向けて」リーフレット


適切な労働時間管理と業務効率化

①まずは労働時間の"見える化"

則として会社は、従業員の労働時間を把握しておかなければなりません。

【労働時間の考え方】

 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。
例えば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当します。


【記録すべき事項】

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。


例えば、出勤簿等で「出社の有無」のみを確認する形で管理している場合、労働時間が正しく把握できていない場合があります。
始業・終業」が判断できる形で、記録を行いましょう。


②DXなど、業務の効率化で労働時間の削減

作業には無駄な時間が多く潜んでいることがあります。業務を見直し、無駄を削減することで、新たな時間を生み出すことが可能です。それによって、余裕を持って仕事にあたることができたり、残業の減少につながります。さらに、付加価値の高い業務(利益を生み出すことにつながる業務)に時間をかけることができるようになります。


実際の業務効率化の例

①帳票の作成から発行までのデジタル化による労働時間の短縮 
【効率化への背景】

納品書・請求書・領収書を手書きで作成して発行していた。配達員は日々の訪問先で顧客から注文を受けて書類を作り、事務員は月末にまとめて精算の手続きをしており、それぞれで時間を要していた。さらに、販売量の増加に伴って負担が一層大きくなっていた


【効率化の方法】

納品書・請求書・領収書の作成や発行、管理を電子化して、業務を効率化を行った。



【労働時間短縮の成果】

これまでは注文の集計から発行までの作業に、事務員が月末から翌月の月初にかけて 8 時間ほど要していたが、ほぼゼロになるまで削減できた。また、商品の配達員による手書き作業が、1 日1 時間ほど削減された。書き間違いの防止にもつながった。取組後は社内全体では週 6 時間程度の労働時間が短縮された。時間に余裕が生まれ、年次有給休暇の制度を拡充したことで、年休の取得日数が年間5~6日から 12 ~ 13 日まで増加した。
また、このように業務を効率化したことで、営業利益が約 3%向上した。


②営業管理・見積作成の自動化による作業時間の削減
【効率化への背景】

顧客からの要望等を個別にヒアリングしていたので、顧客対応や受注管理に時間を要していた

【効率化の方法】

営業管理や自動見積り用のシステムを導入し、業務の効率化や労働時間の短縮を行った。

【労働時間短縮の成果】

顧客には定型的なヒアリング項目に則して要望を回答してもらうようにしたことで、これまでヒアリングしていた内容を自動で回収できるようになった作業時間が約 44%削減されたことに加えて、システム経由で新規の問い合わせが月 2 ~ 3 件入るようになり、営業機会の拡大につながっている。見積り書の発行も、作業時間が約 42%削減された。こうした作業時間の短縮によって、1 日あたりの時間外労働が平均 1 時間程度減少し、休暇も取得しやすくなった。営業利益が約 5%向上した。
引用:厚生労働省「生産性向上のヒント集」


業務効率化に活用できる助成金


①業務改善助成金
 業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。

②働き方改革推進支援助成金
 生産性を高めながら労働時間の削減等に取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業を支援する事業主団体に対して助成するものであり、中小企業における労働時間等の設定の改善の促進を目的とています。
 ►労働時間短縮・年休促進支援コース
  生産性を高め労働時間の削減、年次有給休暇や特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主に対して経費の一部を助成するものです。

 ►勤務間インターバル導入コース
  勤務間インターバル制度を導入する中小企業事業主に対して経費の一部を助成するものです。

※お問い合わせの時期によっては申請締め切りが到来している場合がございます。ご了承ください。

 
まとめ

 人手不足が叫ばれる中では、在職中の従業員への過重労働となってしまう場合が多くあります。この機会に内部の業務を見直し、効率化へ向けてDX化等を積極的に進めていただけたらと思います。弊社では、勤怠管理・人事労務管理のDX化もサポートしております。
 実際に長時間労働が発生している場合・これから長時間労働が見込まれる場合などぜひご相談いただければと思います。
 ご不明な点や貴社に合わせた対応のご相談は、どうぞお気軽にお声かけください。


手続きサポートはA社会保険労務士法人まで!!

 法令に対応した労務相談や就業規則の作成・改定、労使協定の締結、各種助成金の申請支援なども行っています。 
助成金の活用や退職金相談、労働保険・社会保険関係の手続きなど人事労務に関することはA(エース)社会保険労務士法人にお任せ下さい!
さらに、福利厚生となる企業型確定拠出年金の導入、勤怠・労務管理のDX化、Web給与明細や社会保険・労働保険手続き、給与計算など、様々なサービスを提供しています。お気軽にご相談ください。


ご相談はお問い合わせフォームから










A社会保険労務士法人 2025