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【京都の社労士コラム】「うちは小さい会社だから大丈夫」は本当?労基署の調査について

2026年02月12日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

ここ最近、続々と『労働基準監督署の調査通知書が届いたが、どうすればいいか!?』とのご相談が増えております。
経営者様・人事労務ご担当者様からすると、いきなり届くこの通知書にドキッとされる方も多いのではないでしょうか?
もし調査が来た時にどんな対応が必要になるのか、何をしなくてはいけないのか、事前に何ができるのか等が気になるかと思います。

 そこで今回のメールマガジンは、『労働基準監督署の調査内容とポイント』をご案内いたします。
 
そもそも『労働基準監督署』ってどんなところ?

 労働基準監督署(通称:労基署)は、厚生労働省の出先機関として、企業が労働基準法や労働安全衛生法などの「労働関係法令」を遵守しているかを監督・指導する機関です。
実際、昨今のSNSでは「労基に通報したら会社が一発で是正された」「ブラック企業に労基が入ってスカッとした」といった投稿も多く、従業員側からすると最後の切り札”“正義の味方のようにクローズアップされる場面も増えており、『労基』というワードだけで戦々恐々とされる事業主様も多いかと思います。
確かに、未払い残業代、違法な長時間労働、労災、安全衛生違反の相談や通報を受け、事業所への立ち入り調査(臨検)や是正勧告、送検などの行政指導もありますが、決してそればかりではありません。 
どちらかというと、労働基準監督署の役割は摘発ありきではなく、まずは事実確認を行い、問題があれば是正勧告や行政指導を通じて改善を促すことが中心です。
SNS上のイメージほど一方的に厳しい存在ではなく、労働基準監督署は、働く人を守りつつ企業がルールを守って運営できるよう導く行政機関と捉えるのが、実態に近いでしょう。

主な役割と業務 内容
① 企業への調査・指導  ・労働時間や残業代の確認
 ・36協定の内容と運用状況
 ・就業規則と実態のチェック
② 労働者からの相談・申告対応  ・未払い残業代
 ・長時間労働
 ・ハラスメント(※一部は別機関と連携)
③ 労災事故への対応  ・労災申請の確認
 ・重大事故が起きた際の調査
 ・再発防止の指導

~ワンポイント~
労働基準監督署が主に取り扱うは次のような法律です。

・労働基準法(労働時間・残業代・休憩・休日など)
・労働安全衛生法(安全配慮・健康管理・労災防止)
・最低賃金法
・労災保険法(労災事故対応)


労働基準監督署の調査とは!?

 調査とは、先にも触れた通り監督署の業務の一つで、企業が労働基準法などの労働関係法令を適切に守っているかを確認するための調査です。
この調査は、『定期的に行われるもの』『労働者からの相談・申告をきっかけとするもの』『業種や事故発生状況を踏まえた重点調査』など、さまざまな理由で実施されます。
会社の規模や業績に関係なく、どの企業でも対象となる可能性があるため、「小さい会社だから大丈夫」といったことはありません
また労働基準監督署の調査には、目的やきっかけによっていくつかの種類があります。


調査の種類 概要 特徴 主な確認内容
定期監督(定期調査) あらかじめ計画された、定期的に行われる調査 ・業種や規模、過去の指摘履歴などをもとに選定
・事前に連絡があるケースが多い
・特定の違反がなくても実施される
・労働時間・残業時間の管理
・36協定の届出・運用状況
・残業代の支払い
・年次有給休暇の取得状況
申告監督(申告による調査) 労働者からの相談・申告をきっかけに行われる調査 ・未払い残業代がある
・長時間労働が続いている
・休憩が取れていない
・予告なしで実施されることも多い
・申告内容に関連する点を重点的に確認
・実態確認が厳しくなりやすい
災害時監督(労災事故調査) 労災事故(特に重大事故)が発生した場合に行われる調査 ・事故原因の究明が目的
・安全配慮義務の履行状況を確認
・再発防止策の指導が中心
・作業手順・安全管理体制
・教育・研修の実施状況
・安全衛生管理体制
再監督(是正後の確認調査)
過去に是正勧告・指導を受けた後、
改善が本当に行われたかを確認する調査
・是正報告書の内容と実態をチェック
・改善が不十分だと再指導の可能性
・同じ違反が続くと対応が厳しくなることも
・過去の是正内容
重点監督・特別監督 特定のテーマや業種に絞って行われる調査 ・長時間労働対策の重点監督
・最低賃金引上げ後の賃金調査
・飲食業・建設業など特定業種への集中調査
・定期監督と同様の内容だが、内容を絞って 
 「狭く・深く」確認される




上記の表で調査の種類で特に多いのは『定期監督(定期調査)』で、近年、調査の件数も多くなっています。

参考:厚生労働省「労働基準監督年報」15P

~ワンポイント~ 
Q. 労働基準監督署の調査は、突然来るもの?

A.  労働基準監督署の調査は、『事前に連絡があるケース』と『予告なく来訪するケース』の両方があります。
「特に大きな問題を起こしていないから大丈夫」と思われがちですが、会社規模や業種を問わず実施されるのが実情です。
ここからは件数が一番多い『定期監督(定期調査)』について掘り下げてみます。


定期監督(定期調査)で必ず確認されるポイント

 定期監督(定期調査)では、以下の書類の提出を求められます。まずはこの書類を揃えることから始まります。

●労働基準監督署から求められる書類

1)労働者名簿
(2)就業規則(賃金規程等諸規程を含む)
(3)雇入時の労働条件通知書
(4)出勤簿、タイムカード等の労働時間管理にかかる記録(指定された期間分
(5)賃金台帳(指定された期間分)
(6)時間外・休日労働に関する労使協定届の控え (※いわゆる36協定)
(7)1年単位の変形労働時間制を導入の場合は、当該労使協定及び協定届の控え
(8)定期健康診断個人票(直近に実施した分)
(9)年次有給休暇の取得状況がわかる管理簿等(直近2年間の実績)
(10)労働条件調査票(会社に届いた通知書に同封されています。)

では、実際に定期監督(定期調査)では何を見られるのかを下記に纏めました。
① 労働時間の管理状況
 確認される点
 ・タイムカード・勤怠管理データ

 ・出退勤時刻と実労働時間
 ・休憩時間が適切に取られているか
 
 よくある指摘
 ・打刻はあるが、実際はサービス残業

 ・休憩時間が形だけになっている
 ・始業前・終業後の作業が労働時間に含まれていない

② 時間外労働・36協定の内容と運用
 確認される点

 ・36協定の届出有無・有効期限
 ・協定時間内に収まっているか
 ・特別条項の運用状況
 
 よくある指摘
 ・協定はあるが期限切れ
 ・協定時間を超えて残業している
 ・特別条項の発動理由が曖昧

③ 残業代の支払い状況
 確認される点
 ・残業代の計算方法

 ・割増率(25%・35%など)
 ・固定残業代(みなし残業)の有無と内容

 よくある指摘

 ・管理職だから残業代不要と誤解している
 ・固定残業代の要件不備
 ・計算根拠が説明できない

④ 就業規則・労使協定の整備状況
 確認される点

 ・就業規則の届出・内容
 ・実際の働き方との整合性
 
 よくある指摘
 ・就業規則が古い

 ・制度はあるが運用していない
 ・変形労働時間制の手続き不備
 ・従業員数10名以上でありながら就業規則がない

⑤ 年次有給休暇の管理
 確認される点
 ・年5日の年休取得義務

 ・取得状況の管理方法
 ・年休管理簿の有無

 よくある指摘
 ・取得状況を把握していない
 ・管理簿が未作成
 ・年5日の年休取得が出来ていない

⑥ 最低賃金・賃金台帳
 確認される点
 ・最低賃金を下回っていないか

 ・賃金台帳の記載内容
 ・賃金支払方法・締日・支払日

 よくある指摘
 ・最低賃金を下回っている

 ・賃金台帳に記載すべきものが記載られていない
 ・残業単価の計算が間違っている

⑦法定健康診断の実施・管理
 確認される点
 ・法定健康診断を実施しているか

 ・健康診断個人票を保管しているか
 ・異常所見への対応をしているか(医師の意見聴取を実施しているか)

 よくある指摘
 ・健康診断結果を保管していない
 ・異常所見があったにも関わらず、医師の意見聴取を受けていない
 上記は代表的な指摘内容で、それ以外にも指摘される事項があります。
指摘され、是正を求められると、是正勧告書・指導票が発行されます。


是正を求められたら、どう対応すればいい?

 是正勧告書・指導票に指摘事項が記載してあるので、『何がダメで、何を是正しないといけないのか』を確認しますが、
まずは、内容の読み違いをしないように注意が必要です。
是正の基本対応としては、以下のようになります。

是正の基本対応の流れ
1.是正勧告書の内容を正確に確認

2.是正期限を把握

3.実態の是正(運用改善・未払い解消など)

4.是正報告書の作成・提出

5.再発防止策の実施

是正対応としては、 「書類だけ整える」のではなく、実態改善が重要です。また、運用ルールの見直しや、労務担当者への周知等、再発防止策をしっかり整えることで、再監督のリスクを減らすことができます。

是正を求められた場合は、「期限内に・実態を直し・再発防止まで行う」これが基本対応です。


調査=即罰則、ではありません

 労働基準監督署の調査というと、違反=すぐに罰金・処分というイメージを持たれがちですが、実際はそんなことはありません。
多くの場合は『是正勧告』『行政指導』として改善を求められるところからスタートします。
期限内に是正し、是正報告書を適切に提出すれば、それだけで処分や罰金になるケースは多くありません。
では、『どんな場合に罰則につながるのか?』というと、次のような場合は、対応が厳しくなる可能性があります。
『是正勧告を無視・放置した場合』虚偽の報告をした場合』同じ違反を繰り返している場合』悪質性が高いと判断された場合』
つまり、「調査を受けたこと」ではなく、「調査後の対応」が重要なのです。
調査後は、 『改善しようとする姿勢があるか』『再発防止を考えているか』といった姿勢を見せる事が重要になってきます。


まとめ
 今回、労働基準監督署の調査をテーマにお伝えしてきましたが、労働基準監督署の調査は、会社を処罰することが目的ではなく、労務管理の適正化を図るためのものです。
調査への対策で大切なのは、やはり「事前の備え」です。調査が入ってから慌てて対応するのではなく、日頃から労務管理の状況を確認しておくことが重要になります。
「指摘されてから直す」のではなく、「指摘されない状態を作る」ことが、会社を守る一番の方法です。
仮に調査で是正を求められたとしても、それは会社の仕組みや運用を見直し、より分かりやすく、整った労務管理体制を作るチャンスと捉えることができます。
なお、こうした日常的な労務管理を支える手段の一つとして、勤怠管理システム「KING OF TIME」といったツールもあります。
必須というわけではありませんが、労働時間の把握や管理をシンプルにしたい場合には、検討材料の一つとして知っておくと安心です。

労基調査は「来たら困るもの」ではなく、日々の労務管理を振り返る一つの物差しです。この機会に、自社の足元を見直してみてはいかがでしょうか。


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