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【京都の社労士コラム】台風・豪雨等の自然災害に伴う休業と休業手当

2022年08月25日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

本日は「自然災害発生時の企業の対応」についてです。

 台風や豪雨などの自然災害により会社が直接被害を受ける場合のほか、被災地以外に事業場がある企業であっても、自然災害で鉄道や道路等が途絶することなどにより、原材料や製品等の流通に支障が生じ、業務に影響が出ることもあります。
 また企業は、従業員が安全かつ健康に働くことができる職場環境への配慮や対策をおこなう「安全配慮義務」を負っていますが、台風や豪雨などの災害発生時についても同様です。そのため、自然災害が起きたときに、従業員の安全を第一に考え休業を指示するケースもあります。そして災害直後に業務量が急増したり、従業員本人が被災し給与面で相談を受けるケースなども考えられます。

 今回は、自然災害が起きたときに考えられる企業対応についてご説明します。

自然災害が起きた時の出勤判断について

 自然災害が起きたときの出勤では、【企業の判断】で自宅待機や休業を命じるケースと、【本人の判断】で出勤しないケースがあります。  地震など発生タイミングが予測できない自然災害もありますが、台風や豪雨などはニュースなどの情報から事前に自然災害の可能性を把握できることもあります。
 そのため、事前もしくは災害直後に従業員へ企業方針を迅速に伝えるためにも、災害時の出勤について決めておくことをおすすめします。

企業の判断で休業をする場合

 自然災害が起き、事業活動が行える状態で会社都合による休業を命じるときは、従業員の安全確保のために取った措置だとしても、従業員に対して平均賃金60%以上の休業手当の支払が必要です。
 ただし、台風や豪雨により事業場の建物倒壊や器物破損など施設や設備が直接的な被害を受け、出社しても事業活動を行える状態でないときなどは、天災事変等の不可抗力による休業となり、企業都合の休業とは判断されず、休業手当の支払の必要はありません。

≪労働基準法の休業手当≫
(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
➡使用者(事業主)の責任でなければ休業手当の支払い義務はない、ということになります。
 しかし、ここでいう「使用者の責に帰すべき事由」は、厳格に判断されるべきとされており、ただ単に「台風が来ているから休み」というだけでは、休業手当の支払い義務が発生することがあります。

≪不可抗力の要件≫
1.    原因が事業の外部より発生した事故であること
2.    事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしたとしてもなお避けることのできない事故であること
➡たとえば地震によって企業の設備が壊れてしまい、従業員が休業することになった場合、地震は事業主に責任のないものであり、経営者として細心の注意を払ったとしても避けることのできないものであると判断されるため、使用者の責に帰すべき事由には該当しないといえます。

取引先が被害を受けた場合

 自社は被害がなくても、地震によって取引先の企業が被害を受け、その影響で自社の経営が悪化し、従業員が休業を余儀なくされた場合、自社の設備などに被害がないということであれば、原則としては使用者の責に帰すべき事由に該当すると判断されます。つまり、従業員に対して休業手当を支払わなければいけないということです。
 ただし、休業が先ほど紹介した不可抗力の要件を満たしている場合、例外的に使用者の責に帰すべき事由に該当しないと判断される場合があります。
 実際にこの点を考える際には、取引先への依存の程度や公共交通機関の復旧の状況、ほかの代替手段の可能性、災害発生からの期間や使用者の休業回避努力などを総合的にふまえて判断することになります。

 このように判断するケースはあくまでも例外なため、原則としては休業手当の支払いが必要になると認識頂ければと思います。

本人の判断によって出勤しない場合

 以下の例のように本人の判断で出勤しないときや自然災害の影響により出勤できなかったときは、休業手当の支払の必要はなく、欠勤扱いとなります。このような場合は本人に負担なく休む判断をしてもらうためにも、本人の申出により、事後に有給休暇として扱う企業もあります。
(例)
・通信回線の障害などにより、職場と連絡がとれず自主的に自宅にいることにした
・台風や大雨による浸水のため、職場まで行ける状態ではなかった など

(その他の企業対応例)
・災害休暇などの特別休暇を設ける
・時差出勤を活用する
・テレワーク勤務を推奨する など

従業員の安全確保や事業継続のために企業が検討しておくこと

 自然災害が発生すると、通常業務が困難になります。そのため、事前に自然災害の発生被害を想定して、従業員の安全確保と、速やかに事業を復旧させるための対応を検討しておくことをおすすめします。

【従業員の安全確保】
・災害時の連絡方法(メール・SNS等)の従業員への周知
・避難場所の把握と周知
・事業場内の避難経路の確保
・建物・社内設備の安全確認
・非難訓練や必要品備蓄の見直し など

【企業の事業継続のための取組】
・テレワークの導入
・災害時の優先業務の選定
・災害時の出勤者の選定
・出勤が不可能になる可能性のある従業員の業務引継ぎ方法
・電気、ガス、水道、通信など障害が起きた時の緊急対応 など

自然災害後の時間外・休日労働

 法令で定められている労働時間の限度時間は、原則1日8時間、週40時間です。企業が原則の限度時間を超えての労働や休日労働を従業員に命じるときには、事前に届け出ている36協定で定めた時間外・休日労働の範囲内で労働させることができます。

 自然災害直後も、過重労働による健康障害を防止するため、36協定で定めた時間外・休日労働を遵守します。
 しかし、「例外」として、企業や被災地域の被災による早期復旧のための対応や、事業運営を不可能とさせるような施設・設備故障の修理やシステム障害復旧など、緊急かつ臨時の必要があるときなどは、労働基準監督署の許可を得て、時間外・休日労働の上限規制に関わらず、必要な限度においての時間外・休日労働が認められるケースがあります。緊急事態のため許可を受ける時間がないときには、事後の届出でもよいとされています。  

 例外の認定は、緊急性や必要性について個別かつ具体的に判断されます。単なる業務の繁忙などは認められません。災害その他避けることのできない事由に当たるかの判断については、以下リーフレットを参考のうえ、管轄の労働基準監督署へ相談ください。

参考 厚生労働省「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について」

給与の非常時払い

 従業員本人や従業員の家族が被災し、住居の変更を余儀なくされる場合など、災害による急な出費が必要になることがあります。
 給与は毎月一回以上、一定の期日を定めて支払いをします。 しかし、例外として、従業員が非常時の出費を必要とするときは、給与の支払日前であってもすでに労働した分の給与を払うように法令等で定められています。非常時のケースには、出産、疾病、結婚、長期帰郷、そして「災害をうけたとき」があり、災害には、大雨や台風による自然災害も含まれます。

 この給与の非常時払いは、すでに行った労働に対しての給与の支払であって、これから行う予定の労働分に対しての給与(前借り)に応じることを求めるものではありません。

参考 令和2年(2020 年)7月豪雨による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A

最後に

 台風や豪雨、地震などの自然災害は、業種を問わず、会社に多大な影響をもたらす可能性があります。様々な事態を想定し、素早い対応ができるようにしておくことが重要です。また、休業手当を支払う場合についても、トラブルを回避するため、社内で情報共有や周知を行う必要があります。
 災害発生時でも冷静に対応できるよう、会社としての対応について準備を行い、従業員の方々が安心して働くことができる『災害に負けない企業』を目指しましょう。

A社会保険労務士法人ではこのような労務相談や助成金、勤怠管理など職場環境の改善に関する支援もしております。

是非、お気軽にご相談ください。


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