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【京都の社労士コラム】監督署の調査はどうやって決まるの!? 労働基準監督署の調査の対応について

2022年07月21日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 本日は、『労働基準監督署の調査対応について』のご案内です。

 労働基準監督署は、労働基準法だけではなく、労働安全衛生法や最低賃金法、労災保険法など雇用にかかわる法律を担当し、調査や指導を行っています。残業代の未払いはないか、法律で定められた帳票類が作成されているか、健康診断は実施されているかなどを調査し、違反が発覚したとき企業に対して改善を行うよう是正勧告を行います。
 今回は労働基準監督署の調査の1つ、定期監督についてご紹介します。

労働基準監督署の調査の種類
 労働基準監督署の調査は4種類あり、実施後、必要に応じて企業へ改善等の是正勧告を行います。改善等に応じず、重大・悪質な事案と判断されると司法処分(以下、送検)が行われます。

①定期監督
年度ごとに重点課題や項目などを定めて行う調査です。直接、企業に出向く立入調査や、資料を労働基準監督署に持参するよう求められる呼び出し調査などがあります。

②申告監督
従業員から労働基準監督署へ、賃金の未払いや不当解雇などの申告があったときに行う調査です。

③災害時監督
一定規模(死亡、身体障害者等級第7級以上など)の労働災害が起きたときに行う調査です。労働災害の原因や再発防止の指導を行います。

④再監督
過去に是正勧告を受けたが労働基準監督署へ報告書を提出していない、是正勧告に従わないなど、企業の対応が悪質と判断されたときに行う調査です。


2020年1月1日~12月31日までの各調査の実施件数

(引用)厚生労働省『2020年労働基準監督年報』P.9

調査の内容はどのように決められるのか
 調査方針は年度ごとに厚生労働省が発表している「地方労働行政運営方針(以下、運営方針)」がもとになっています。
 
 運営方針には、労働関係の重点課題や対策が記載されており、各都道府県労働局はそれらを元に雇用・失業の状況変化や多様な人材活用の促進、労災事故などを考慮し、調査の計画方針を定めます。

 各労働基準監督署は、労働局の計画方針に基づき、管轄内の状況などを考慮し調査の計画を決めます。

(出典)厚生労働省『令和4年度地方労働行政運営方針について

2022年度に調査が入りやすい業界はどこか
 運営方針では、全国的に取り組むべき重点課題の1つである長時間労働の抑制の観点から「自動車運送業」「建設業」「情報サービス業」を勤務環境の改善対象にしています。支援なども含め、重大な問題があると考えられるところから調査や指導が行われる可能性があります。
また、業種を問わず以下については重点課題とされています。

1 長時間労働の抑制および過重労働による健康障害防止
2 中小企業を中心とする法改正の周知および支援等
3 労働災害発生状況等に応じた労働災害の防止


労働基準監督署の是正勧告とは
 労働基準監督署の調査後、法令違反があれば改善を行う「是正勧告」が書面で渡されます。  企業が是正勧告を受けたときは、改善内容を「是正報告書(任意書式)」にまとめ、労働基準監督署へ報告を行います。

 是正勧告は、行政指導にあたるため強制力はなく、労働基準監督署の指導に従うかどうかは企業が決められますが、従わないということは法令違反を放置している状態ということです。改善を促すための再調査の実施や、重大・悪質な事案については送検されることもあります。

司法処分(送検)されると企業名などが公表される
 各都道府県労働局が、労働基準関係法令違反で公表した企業名や法令違反の内容などをまとめています。また、送検を行った企業名、違反内容などはサイトで公表されることがあります。
 
 公表されている中には、「36協定の延長時間を超える違法な残業」や「賃金が最低賃金以上の金額で支払われておらず行政指導に応じない」などの事案もあります。

 企業名が公表されると今後の事業継続に影響が出る可能性もありますので、是正勧告を受けたときは速やかな改善をおすすめします

(出典)厚生労働省『労働基準関係法令違反に係る公表事案

労働基準監督署の調査時に準備するもの
 労働基準監督署の定期調査は、事前に書面で企業に知らされます。日時と当日の準備資料が指定されるので、それに沿って準備を行います。

 まれに、書面の前に電話連絡があるケースや連絡なしで調査に来るケースもあります。準備に時間がかかる、指定日時に予定があり対応ができないときは、早めに労働基準監督署に調査日時変更の相談をしてください。

当日の主な準備資料は以下になります。
・労働者名簿
・雇用契約書
・出勤簿(タイムカード)
・賃金台帳
・就業規則、諸規定
・労使協定書(36協定など)
・年次有給休暇管理簿
・健康診断の結果(健康診断個人票) など

 「調査を拒みたい。」という企業もありますが、拒めません
 調査を拒む、虚偽の陳述をする、虚偽の帳簿書類を提出するなどの行為は法令違反となり、30万円以下の罰金が科せられることもあります。

法令違反のままだと採用等にも影響があります
 求人者が安心して仕事を探せるよう、ハローワークは法令違反がある企業の求人を受理しないことができると法律で定められています。これを求人不受理といいます。

 ハローワークは求人の申し込みに対し、不受理の対象となる求人かどうかを確認するため、求人者に対して自己申告書を求めています。申告の書式は決まっているので、管轄のハローワークにご確認ください。


  (出典)厚生労働省サイト『改正職業安定法(求人不受理)について

※採用以外にも法令違反は、助成金も対象外なりますので、ご注意ください。

最後に

 労働基準監督署の調査や是正勧告は、法令違反などの改善を促すためであり、罰則を科すことが目的ではありません。調査の結果、是正勧告や指導を受けた場合は、自社の状況を受け止め、改善に向けた対策を検討しましょう。

 調査の有無に関わらず、法令違反があると採用や助成金、職場環境などにも影響がでます。 従業員が安心して働ける環境づくりは企業の責務です。できるところから少しずつ対応を進めることをおススメします。

 監督署の調査で1つのポイントになるのが勤怠管理です。
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