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【京都の社労士コラム】高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例

2024年04月25日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。


 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回のテーマは
「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例」についてお送りいたします。


 令和6年4月1日から雇用契約時の明示事項の改正があり、改めて無期転換ルールについて調べた方も多いのではないでしょうか?
有期雇用契約の労働者を5年以上雇用し、労働者から申し出があった場合、無期雇用契約に転換しなければならないというルールがあります。
それは、高齢者であっても同じです。
 高齢者を無期転換した際のリスクと特例について確認しておきましょう。
 


動画解説(2分31秒)是非ご覧ください。
   <画像をクリックすると動画を視聴できます>※倍速視聴も可能です。



無期転換ルールの概要

 無期転換ルールとは、同一の企業とのあいだで、有期労働契約が1回以上更新されて通算5年を超えたときに、従業員が希望するだけで無期労働契約に変更できるルールです。
企業は、従業員からの無期労働契約に変更したいという希望を拒むことはできません。
 なお、実際に無期労働契約に変更されるのは希望したときではなく、次の更新時に無期労働契約として新たな契約が締結されます。
 ただし契約期間は無期に変更されますが、その他の労働条件(賃金など)については特に変更する必要はありません。

             (出典)厚生労働省『無期転換ルールについて』


無期労働契約へ転換するメリット

 現在働いている有期契約労働者の無期労働契約への変更は、企業と従業員の双方に以下のようなメリットが期待できます

1 意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなる
  企業 :自社の実務や事情などに詳しい無期契約労働者を比較的容易に獲得できます。
従業員:雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約に変更することで、安定的かつ意欲的に働けるようになります。

2 長期的な人材活用戦略を立てやすくなる
  企業 :有期労働契約から無期労働契約に変更することで、長期的な視点に立った社員育成が可能になります。
従業員:長期的なキャリア形成を図ることができます。


無期転換ルールに関する労務管理上の注意点
 
 1 雇止め・契約期間中の解雇などについて

 企業が無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中の解雇などを行うことは、法律の趣旨に照らして望ましいものではありません。
有期労働契約の満了前に企業が一方的に更新年限や更新回数の上限などを設けることは、不当な雇止めとして許されない場合もあります。また、契約期間途中での解雇は、やむを得ない事由がある場合でなければ認められません。
 さらに、契約更新上限を設けたうえでクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用を約束して雇止めを行うことなどは、法律の趣旨に照らして望ましいものとはいえません。

 
 2 社員区分による処遇について
 無期転換ルールで無期労働契約に転換した従業員の労働条件は、就業規則などに別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一となります。
 しかし、無期転換者と有期契約労働者の労働条件で契約期間以外に差がない場合や、無期転換者と正社員(一般的に無期契約労働者のことが多い)との役割や責任、処遇の区分とそれらの根拠が明確になっていない場合には、いずれ従業員の中に不公平感が生まれ、職場の一体感を損なうなどのトラブルにつながる可能性があります。また、法律的にも同一労働同一賃金の原則に抵触する可能性があります。


無期転換ルールの例外

無期転換ルールがあるからと言って、会社が何も対応しないと生涯に渡り雇用し続けることになる可能性があります。
そんな会社のリスクを抑えるために無期転換ルールには、2つの例外があります。

「専門的な知識を有している」または「定年後にも継続して同じ企業に雇用されている」有期契約労働者は、会社が法令上定められている雇用管理を計画し、都道府県労働局長の認定を受けた場に、一定の期間、無期転換申込権が発生しなくなる特例があります。

1 高度専門職の特例
 通常は、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に無期転換申込権が発生しますが、
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主に雇用され、
・高収入で、かつ高度の専門的知識等を有し、
・その高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(特定有期業務。以下「プロジェクト」といいます。)
(※)に従事する 有期雇用労働者(高度専門職)については、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10 年です。
(※)毎年度行われる業務など、恒常的に継続する業務は含まれません。

● 年収要件
事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に、その事業主から支払われると見込まれる賃金の額を、1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1,075 万円以上(※)であることが必要です。
(※)「支払われると見込まれる賃金の額」とは、契約期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額をいいます。
具体的には、個別の労働契約または就業規則等において、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金は全て含まれる一方で、所定外労働に対する手当や労働者の勤務成績等に応じて支払われる賞与、業務給等その支給額があらかじめ確定されていないものは含まれないものと解されます。ただし、賞与や業績給でもいわゆる最低保障額が定められ、その最低保障額については支払われることが確実に見込まれる場合には、その最低保障額は含まれるものと解されます。

● 高度専門職の範囲
次のいずれかにあてはまる方が該当します。
① 博士の学位を有する者
② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
③ IT ストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
④ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
⑤ 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
⑥ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
⑦ 国等(※)によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
(※)国、地方公共団体、一般社団法人または一般財団法人その他これらに準ずるものをいいます。

(例)7年のプロジェクトの開始当初から完了まで従事する高度専門職については、その7年間は無期転換申込権が発生しません。



2 定年後の高齢者の特例
 通常は、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に無期転換申込権が発生しますが、
適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、
・定年に達した後、引き続いて雇用される
有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。

※事業主が認定を受ける以前より、同一事業主に定年後引き続き雇用されている方も特例の対象となります。ただし、労働者が既に無期転換申込権を行使している場合を除きます。
※他の事業主(特殊関係事業主除く)に65歳以降の継続雇用をされる方や定年後に再就職した方は、特例の対象にならず、無期転換ルールが適用されます。


(例)定年後の法令上定められている雇用管理を計画し、都道府県労働局長の認定を受けた場合


(出典)厚生労働省『高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について』


雇用契約書への記載

 令和6年4月1日改正の雇用契約書雛形などを見られた方は、何の文章か分からなかったのではないでしょうか?
 「高度専門職の特例」または「定年後の高齢者の特例」について認定された事業所で、対象者と契約する際は雇用契約書に次のように記載が必要です。
①当該対象者の該当する内容を記載しましょう。
  無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者)
   Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間(   年  か月(上限10年))
   Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間

②特定有期業務の場合は従事すべき業務の内容について、特定有期業務の「業務内容」「開始日」「完了日」の記載が必要です。
 
(出典)厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー』
    労働条件通知書【一般労働者用】常用、有期雇用型


まとめ
 
 無期転換ルールについて理解し、社内制度の整備を実施することでリスクを抑え、優秀な人材確保に活かしていくことが必要です。それぞれの会社に合った管理や制度を法律に沿って整備するためにも、社労士等の専門家にご相談ください。
 法律の目的や特例などを理解することで自社に合った労務管理や職場環境が整備出来るのではないでしょうか? 
 会社・労働者双方にとってより良い、労働環境を整えましょう。



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