A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
「従業員のメンタル不調や休職が増えている」――そんな話を耳にする機会が増えていませんか。 近年、うつ病などのメンタル不調に関する相談や休職事案は、多くの企業で重要な課題となっています。精神疾患に対する社会的な理解が進み、医療機関を受診しやすくなったこともあり、これまで見えにくかった不調が表面化しやすい状況になっています。
働き方改革により、労働時間の短縮や休暇取得の促進、仕事と家庭の両立支援などは進んできましたが、それでもメンタル不調は、職場環境・人間関係・生活環境の変化など、さまざまな要因をきっかけに誰にでも起こり得ます。
このような背景から、平成27年よりストレスチェック制度が設けられ、まずは「50人以上の事業場」で実施が義務化されました。 さらに令和7年5月には、「50人未満の事業場」にもストレスチェックの実施義務を拡大する法改正が公布され、今後3年以内に施行される予定です。
今回のメルマガでは、ストレスチェック義務の対象拡大に伴い、制度の趣旨、法改正の内容、そして企業が準備すべき対応についてわかりやすく整理してご案内いたします。
ストレスチェックとは
「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。 従業員が仕事や職場環境に対してどの程度ストレスを感じているのかを把握し、必要に応じて医師による面接指導につなげることで、メンタル不調を早期に発見する役割を果たします。また、結果を活用した職場環境改善にもつながる重要な仕組みです。
加えて、制度には以下のような効果が報告されています。
・厚生労働省の調査(第7回検討会資料)によれば、ストレスチェックを受検し「個人結果をもらった」労働者の 約7割 がその結果を「有効だった」と回答しています。 ・医師による面接指導を受けた高ストレス者の 過半数 も「面接を受けてよかった」と評価しており、これはストレスへの「気づき」を促し、二次予防的な意味でも制度が機能していることを示しています。 ・長期的な研究では、ストレスチェックの結果と 集団分析+職場環境改善 を組み合わせた事業場では、心理的ストレス反応が統計的に有意に低下したという報告もあります。
参照|厚生労働省|第7回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録
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こうしたデータは、ストレスチェックが単なる「形式的な義務」ではなく、**働く人自身のストレス状態への気づきにつながり、職場全体のメンタルヘルス改善にも寄与できる制度であることを裏付けています。
【実施対象となる労働者】 ストレスチェックの対象者となるのは「常時使用する労働者」となります。 以下のいずれの要件も満たす者をいいます。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。 ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。 |
実施頻度:1年以内ごとに1回 ※定期健康診断と対象者や実施頻度は同様となります。
ストレスチェックは義務対応であると同時に、離職防止・職場改善に直結する制度です。
参照|厚生労働省|ストレスチェック制度導入ガイド P2
法改正の内容(50人未満の事業場にも適用)
今回の法改正により、これまでストレスチェックの実施義務は「常時50人以上の労働者を使用する事業場」が対象でしたが、今回の法改正により、50人未満の小規模事業場にも対象が拡大されることになりました。 義務化の開始時期は「公布後3年以内」に施行される予定で、具体的な適用スケジュールなどは今後詳細が示される見込みですが、各企業には早めの準備が求められます。
【ポイント】 対象事業場の拡大:常時50人未満の事業場(本社人数とは別に、事業場単位で判断します) 実施内容 :50人以上事業場と同じく「年1回のストレスチェック」「高ストレス者への医師面接指導の実施」「(義務ではないが)集団分析の実施が望ましい」 制度の目的 :小規模事業場におけるメンタルヘルス不調の早期発見・予防
※法改正を受け、今後小規模事業場も実施体制を整える必要があります。
参照|厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて P2
ストレスチェックの実施手順・方法
【実施手順】 ストレスチェックの実施手順は以下となります。

参照|厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)
【ストレスチェックの実施方法】 ストレスチェックは、以下のいずれかの方法で実施できます。 人員体制や業務量に応じて、最も負担の少ない方法を選択することが重要です。
(1)産業医・保健師等への委託 もっとも一般的な方法で、実施者(医師等)に質問票の選定や実施・評価を依頼する方式です。
メリット:法的要件を満たしやすく、医師面接指導にもスムーズにつながる デメリット:小規模事業所ではコストが課題になる可能性がある
(2)ストレスチェック専用システムの利用 近年は、オンラインで回答・集計・保存を行える民間システムが多数提供されています。
メリット:低コスト、実施の手間が大幅に軽減、回答の匿名性も確保しやすい デメリット:医師による実施者が必要な点は変わらないため、医師との連携は必須 |
※50人未満の事業場は、地域産業保健センターを無料で活用できる場合があります。 但し、原則として地域産業保健センターは制度導入の相談窓口としての役割であって、実施は自社又は外部機関等に委託して実施することになります。
ストレスチェック実施後の対応
ストレスチェックは「実施するだけ」ではなく、結果に応じた適切な対応が求められます。
(1)高ストレス者の判定と医師面接指導 高ストレスと判定された労働者から申出があった場合、企業は医師の面接指導を実施する義務があります。 面接結果に基づき、労働時間の調整、配置転換など必要な措置を検討します。
(2)集団分析による職場環境改善(努力義務) 部署ごとのストレス傾向を分析し、長時間労働、人員配置、コミュニケーション不足、業務量偏りなど、職場環境の改善につなげます。 分析は企業の働きやすさ向上に大きく寄与します。
(3)個人情報保護の徹底 ストレスチェック情報は、健康情報として厳格な取り扱いが求められます。 本人の同意なく会社側(上司・人事担当・経営者など)に提供してはなりません。
(4)保存期間・保存方法 ストレスチェックの結果は、個人情報として厳重に管理し、5年間保存する必要があります。 50人以上の事業場は実施結果を監督署へ報告する義務があります。 |
参照|厚生労働省|小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (素案) P6
実施に向けた準備
法改正の完全施行まで3年以内とされていますが、早めの準備が安心です。 以下の準備を進めておくことでスムーズな対応が出来ます。
(1)ストレスチェック制度の実施に向けた準備 ①事業者による方針の表明 ・事業場としてストレスチェック制度を実施する趣旨や目的を、トップや管理者が従業員に明確に示す。 ②関係労働者の意見の聴取 ・従業員に説明会やメール、社内掲示、社内研修などで制度趣旨・手順・守秘義務を周知する。 ③社内ルールの作成・周知 ・実施手順書やフロー図の整備し、個人結果の取り扱い、面接指導へのつなぎ方、保存方法などを明確化する。
(2)ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定 ①実務担当者の選任 ・委託先や医師の選定は、信頼性・個人情報保護・実施コストを考慮する。 ②ストレスチェックの委託先の選定・契約 ・産業医、外部機関(保健師派遣会社)、オンラインシステムなど、信頼性の高い委託先を選定する。 ③医師の面接指導の依頼先の選定 ・高ストレス者が申出た場合に面接指導を行う医師を事前に決定し、面接の申出手順、予約方法、守秘義務の取り扱いを明確にする。 ④実施時期及び対象者の決定 ・年度の実施時期、全体スケジュールを決め、対象者を確認し決定する。 ⑤質問票及び高ストレス者の選定方法の決定 ・質問票の種類(厚労省モデル・外部システム等)、高ストレス者の基準や判定方法を事前に設定しておく。 |
参照|厚生労働省|小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (素案) P7~16
まとめ
まだ、施行日が明確になっていませんが、3年以内にストレスチェックの義務化が全事業場に適用されます。 ギリギリになって慌てなくて良いように早めに準備をしておきましょう。
また、経済産業省において、「健康経営優良法人認定制度」を実施しています。 健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。
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ストレスチェック義務化に向けて必要な準備とは?【解説動画】2分58秒
<画像をクリックすると動画を視聴できます。>※倍速視聴も可能です。

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