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【京都の社労士コラム】無期転換ルール、ご存じですか?運用リスクと、企業の対応とは??

2022年08月18日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

本日は「無期転換ルールについて」のご案内です。
無期転換ルールが適用されて5年が経過し、2018年4月から無期労働契約への申込権が本格的に発生しています。
厚生労働省では、無期転換ルールの活用状況や有期労働契約などの雇用への影響などの調査と、検討会を行いました。
今回は無期転換ルールのおさらいと、無期転換ルール運用でリスクになりがちな無期転換前の雇止めや無期転換回避策を中心に、今後の有期契約労働者の雇用管理についてご紹介します。



無期転換ルールとは

無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約(※1)が更新されて通算5年を超えたときに、有期契約労働者の申込みによって無期労働契約(※2)に転換されるルールです。

※1 有期雇用契約とは、期間を決めて雇用される契約社員やパート、嘱託社員などです。※2 無期雇用契約とは、雇用形態(正社員、パート、アルバイトなど)に関係なく、雇用契約の期間が定められていない契約をいいます。



(出典)厚生労働省『有期契約労働者の無期転換ポータルサイト』


有期契約労働者が無期転換を希望する理由とは

無期転換ルールの企業側の効果としては、従業員の安心感や定着率の向上があげられます
従業員側にも、雇用が安定し、無期労働契約になることで様々なキャリア展開ができるなどのメリットがあります
無期転換申込権が本格的に発生した2018年・2019年度に無期転換した人数は約158万人と推計されています。





(出典)厚生労働省『無期転換ルールと多様な正社員の労働契約関係に関する現状等』P15

厚生労働省の調査によると、有期契約労働者が無期転換を希望する理由は以下のとおりです。


有期契約労働者が無期転換を希望する理由

雇止めの雇用の不安がなくなるため
長期的なキャリア形成の見通しや将来的な生活設計が立てやすくなるため
無期転換後の賃金や労働条件の改善が期待できるため
社会的な信用が高まるため など

反対に希望しない理由は、「定年後の再雇用者で高齢だから」「契約期間が無期になるだけだから」「無期労働契約ではなく正社員になりたいから」などがあがっています。
(引用)厚生労働省『無期転換ルールと多様な正社員の労働契約関係に関する現状等』P19

無期転換申込権の対策で生じる企業のリスク(1~4)

有期労働契約では、あらかじめ企業と労働者との間で決められた契約期間が終われば、雇用契約は終了します。
企業が有期契約労働者を雇用する理由としては、「業務量の中長期的な変動に対応するため」「人件費(賃金、福利厚生など)を低く抑えるため」「業務量の急激な変動に際して雇用調整ができるようにするため」などがあげられます。

また、無期転換ルールに対応するうえでは、「有期労働契約と無期転換後、正社員のあいだの仕事や働き方を踏まえた労働条件のバランスが取りにくい」や「業務量の変動に伴う人員数や労働時間等の調整が難しい」などの企業課題があります。
以下、無期転換申込権の対策で生じるリスクを整理しました。


1.無期転換申込権が発生する直前に雇止めをする

雇止めとは、契約更新の繰り返しをし一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新せず期間満了をもって退職させることです。
労働者に、「契約更新されるもの」と期待が生じている状況で、無期転換申込権の発生を回避するために雇止めを行い、他に雇止めを行う合理的に理由がないときは、その雇止めは客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断される可能性があります。



2.無期転換申込権の発生前に企業が一方的に更新上限を設定する

契約期間の更新上限を設定すること自体は違法ではありません。
更新上限の有無が不明確な場合は、労働者が契約更新や無期転換の期待を抱く可能性があるため、最初の契約締結時に明確にしておくことをおすすめします。
最初の契約締結より後に、無期転換申込の発生回避のために企業が一方的に更新上限を設定すると、その時点で契約更新や無期転換の期待をもつ労働者にとって不利益をもたらすことになると考えられます。
 
そのため、企業の一方的な更新上限の設定による雇止めは、客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断される可能性があります
無期転換申込権が発生する直前の雇止め(1)無期転換申込権の発生前に一方的に更新上限を設定すること(2)で、本来得られたはずの給与が得られなくなったことによる、給与補償などの損害賠償請求リスクが生じる可能性もあります。

3.無期転換後の労働条件について一方的に「別段の定め」を設け申込の抑制をする

無期転換後の労働条件について、就業規則などで「別段の定め」がない場合は、契約期間以外の労働条件については、無期転換前の労働条件と同一となります。
就業規則などで「別段の定め」を設けた場合は、就業の場所や業務内容などを見直すことができますが、別段の定め」をする場合でも、無期転換の申込抑制を目的とした不利益な労働条件の場合は、労働条件の設定・変更の合理性が認められない可能性があります。

4.無期転換申込を行ったことを理由とする不利益な取扱いをする

企業が独自に年齢制限をしたり、無期雇用転換の対象者の条件を決めることはできません。
また、企業は従業員からの申込みを拒むことはできません。
無期転換申込を行ったことによる不利益な取り扱いとして、無期転換申込をしたことによる労働条件の引下げやハラスメント、解雇などがあります。
無期転換後の労働条件について一方的に不利益な「別段の定め」を設けること(3)や無期転換申込をおこなったことを理由とする不利益な変更(4)は、企業の設定した労働条件が無効になったり、無期転換申込の機会を不当に侵害し不法行為にあたると、損害賠償請求リスクが生じる可能性があります。
これら無期労働契約への申込権の対策のために行われた無期転換前の雇止めや、無期転換回避策では、裁判も行われています。
無期転換ルールに関する裁判例は、以下をご覧ください。

参考|厚生労働省『多様化する労働契約のルールに関する検討会 参考資料』

今後、企業が行うべき有期契約労働者の雇用管理とは

無期転換申込権の対策で生じるリスクを考慮したうえで、有期契約労働者の雇用管理について見直しをされることをおすすめします。今後、企業が行うべき雇用管理のポイントは以下のとおりです。



【有期契約労働者の雇用管理】

・有期契約労働者の契約期間や更新時期を管理する
・契約更新の判断基準を明確にする
・更新上限を設けるか検討する
・更新上限を設定する場合は5年超の契約更新や無期転換の期待を抱く発言 は避ける
・無期転換時に適用される就業規則や契約書の見直し
・無期転換権発生の周知・説明方法のマニュアルやフローの作成をする
・更新の判断基準・更新上限・無期転換時の条件について契約締結時・更新時に個別説明する など






今後見直しが検討される無期転換ルールの内容とは

今後、厚生労働省では、調査内容をもとに無期転換ルールの運用見直しが議論されていきます。
・無期転換申込機会の通知を行うことの企業への義務付け
・無期転換申込について労働者への面談等の意向確認や疑問への対応
契約期間の更新上限の有無とその内容を労働条件へ明示することの義務付け
・無期転換申込みを行ったことや転換申込みを妨害する不利益取扱いの禁止  など

参考|厚生労働省『多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書(令和4年3月)』

まとめ

通算5年を超えて更新している有期契約労働者は、企業にとって戦力として定着している従業員ではないでしょうか。
今回の記事を参考に、現在の有期契約労働者の雇用管理について見直す点はないか確認されることをおすすめします。

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