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【京都の社労士コラム】労働契約、口約束で済ませていませんか?会社が知っておくべき労働条件通知書の基礎知識

2026年02月25日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

今回のメールマガジンは、会社が労働者を雇い入れるときに必ず必要となる「労働条件通知書」についてです。

労働契約は、労使双方の合意があれば口頭でも成立します。
では、会社が労働者を雇い入れる際、口約束だけで問題ないのでしょうか?

答えはNOです。

会社は労働者を雇用する際、法令で定められている「労働条件通知書」を必ず書面等で交付しなければなりません。


労働条件通知書とは


労働条件通知書とは、会社が労働者を採用して労働契約を締結する際に、「どのような条件で働いてもらうのか」を書面で示すための書類です。

労働基準法15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めており、この明示義務を果たす手段が労働条件通知書です。

労働条件通知書には、法令で定められた事項を必ず記載しなければなりません。

労働条件通知書は、正社員・契約社員・パート・アルバイト社員など雇用形態を問わず交付する義務があります。
なお、交付方法は原則として書面によるものとされています。

これらに違反した場合、30万円以下の罰金が科されることがあります。

法令遵守に加え、労働条件をめぐるトラブルを防止するためにも書面等による明示は不可欠です。
求人票や面接時の口頭説明だけでは足りず、労働契約締結時にあらためて労働条件通知書等で明示する必要があります。


労働条件通知書に明示(記載)しなければならない事項


労働条件通知書に明示(記載)する内容は、大きく分けると次の二つです。

1.必ず明示しなければならない事項(絶対的明示事項)


①労働契約の期間に関する事項


②有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または契約更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む)

③就業の場所および従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む)

④始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑤賃金(退職手当および臨時賃金などを除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期ならびに昇給に関する事項

⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む)




これらのうち、「昇給に関する事項」を除き、原則として書面等で明示する必要があります。

「昇給に関する事項」ついては口頭での説明も認められますが、書面での明示がより安全です。

2.会社が定めている場合に明示が必要な事項(相対的明示事項)


①退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項

②臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項

③労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

④安全及び衛生に関する事項

⑤職業訓練に関する事項

⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑦表彰及び制裁に関する事項

⑧休職に関する事項



なお、これらの事項は会社が定めている場合に限り明示が必要であり、定めがなければ明示の義務はありません。

参考:厚生労働省 モデル労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)



短時間・有期雇用労働者に明示が必要な事項(特定事項)


契約社員やパート・アルバイトなどの短時間・有期雇用労働者には、絶対的明示事項や相対的明示事項に加え、以下の事項(特定事項)も書面等で明示しなければなりません。



①昇給の有無

②退職手当の有無

③賞与の有無

④短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口



これらの明示事項は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」で定められており、違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

参考:厚生労働省 モデル労働条件通知書(短時間労働者用;常用、有期雇用型)


労働条件通知書と雇用契約書の違い


「労働条件通知書」と混同されがちなのが「雇用契約書」です。

労働条件通知書と雇用契約書は混同されがちですが、役割や法的義務は異なります。




【労働条件通知書】

・法令により交付が義務付けられている書面

・使用者から労働者へ交付

・労働基準法施行規則で、記載事項と明示方法(原則書面)が定められている


【雇用契約書】

・法令により交付や作成等の義務がない書面

・労使双方が労働条件に合意したことを証明する書面(双方の署名・押印が一般的)

・記載事項などは法令で定められていない




雇用契約書は法令上必須ではないのに対し、労働条件通知書は法令による義務があります。
雇用契約書を交わしていても、労働条件通知書などで必要事項を明示していなければ、法令違反となる可能性があります。

なお、必要な明示事項が記載されていれば、書式上は「雇用契約書兼労働条件通知書」として1通にまとめることも可能です。


労働条件通知書の明示方法について


労働条件通知書は、労働契約の内容を労働者に知らせるための重要な書類です。

原則として書面での交付が求められています。

ただし、2019年4月以降は、労働者本人が希望した場合に限り、FAXや電子メール等での明示も可能とされました。
この場合でも、受け取った側でプリントアウトして書面を作成できる形式(PDFなど)であることが必要です。


まとめ

 
労働契約は口頭でも成立しますが、会社が労働者を雇用する際には、法令で定められた「労働条件通知書」の交付が必要です。

労働条件通知書は、労働契約の内容や働く条件を明確に示す重要な書面であり、法的に交付が義務付けられています。
絶対的明示事項や相対的明示事項、短時間・有期雇用労働者向けの特定事項など、記載すべき内容は多岐にわたります。

これらに違反すると罰則が科される場合もあります。
単なる口頭説明や求人票だけでは不十分です。

また、雇用契約書と労働条件通知書は似ているようで役割が異なります。
法的義務があるのはあくまで労働条件通知書であり、雇用契約書を交わしていても必要事項が明示されていなければ法令違反となる可能性があります。

労働条件通知書を適切に交付することは、法令遵守だけでなく、労使間のトラブル防止にもつながります。
書面による明示を徹底し、労使双方が安心、納得して働ける環境づくりを心がけましょう。


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